生まれながらにして、今のこの世界の中で誰よりも強大な力を持つ。
それは不幸か、幸福か。
ルシアスの命は非常に短くはあったものの、決して不幸というわけではなかった。
境遇にも恵まれた。
人との繋がりにも恵まれた。
誰かを好きで居られた。
誰かが好きで居てくれた。
ルシアスの人生は今にしてみれば人から哀れまれることも多かったけれど、それと同じくらいに羨むことも多いだろう。
たとえ人は長く生きたとしても、その人生は必ずしも幸せだったとは言えない。
心が千切れそうなくらいに長い間藻掻いて、力尽きて朽ち果てた結果の死ならルシアスのように短くとも幸せな人生を望む者も少なくはないはずだ。
一概にどんな人生が良いかなんて、人の考えでは正しい結論に辿り着かない。何が正しいのかすらも分からない。
むしろ、正しい結論など無いのかもしれない。
ただ言えるのは、人は神の気まぐれの中でどうにか光を捜して与えられた運命に常に抗いながら生きようとするということで、ルシアスもその神の与えた運命に抗い生きていたということだ。
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