迸る衝撃は、もはや確信だった。
「................ルシアス様」
零れたその名は、水面に映るシエラという彼女の名では無かった。
だけれど、そう零すジスの老いぼれた瞳に映るのは彼女だった。
ルシアス。
魔族の大国、今はロアルを王とし世界に君臨するロマリアの今は亡き姫。
多大なる魔力を持ち生まれたがために、数奇な運命により短い人生を終えたはずの幼い少女。
ライルの命よりも大切な人。
何故、その名を呼ぶのか。
何故、彼女を呼ぶのか。
相手は"シエラ"という存在であるというはずなのに。
どうして、二つの存在が重なるのか。
重なり得るのか。
魔族と人間だとかそんな下らない隔たりたりなどは関係ない。
生者であるとか死者であるだとか、そんなことすら些細なことだった。
ただ、確信。
ジスの中に在る、この確信。
それが全ての裏付けで、それ以外はもう何もいらない。
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