「もう一人は確か、シエラという少女だが......やはりこちらも見た限りは普通の―――」
視線を送る二人の男達の姿にささやかな不安わ抱きながらも、今度はそのまま視線を流すようにして最後に残った少女の方を見た。
むさ苦しい男達の中に紅一点。
水面に映る少女は背を向けるような形で映っていたが、その姿はジスの老いた瞳にも可憐に見えて、その場の空気を華やげているように感じた。
だがそうであっても、見た限りでは戦力となるかどうかは疑問であった。
「これで、果たして我等が使命を果たせるのか――――」
彼等の姿。
それに相まって今の自分の中に元々存在していたが無理矢理に押し殺していた不安が、ジスにポロリとそんな弱音を吐かせた。
ジスは老いてこそいるが、一つの大きな組織の指導者だ。
まぁ、老いているからこそ大勢の者を率いて動かす力があるかもしれないが。
大勢の人を動かす立場に立つ指導者たるもの、弱音など吐くのは以ての外。
下にいる者の吐く弱音はただの弱者のぼやきに過ぎないが、上に立つ者の弱音は多大な不安と混乱を誘う。
所詮は人が集まり作った組織。そうなればすぐに崩壊してしまう。
だが、それでも弱気になることもあるだろう。
人の上に立つとはいえ、そんな自分自身も人であることは変わらないのだから。
だから時々、こうやって誰にも聞かれない所でそれを零す。
そんなことも必要なのだと、歳を重ねたからこそジスは知った。
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