「何故.....貴方は魔族なのでしょう?
私は―――人間よ!貴方が滅ぼそうとしてる、その人間なのよ!?
貴方がこの村を襲ったのでしょう?
なのに何故、そんなことをっ」
シエラは声を振り絞り出した。
心の中の不安を押し込めて。
「お前が自分のことをどう勘違いしてるかは知らない。
だけど、お前はこの村の人間達とは違う。
―――それに」
感情高ぶるシエラの声が空間を震わせる。
その彼女の言葉にライルは答え、そこで言葉が一瞬途切れた。
「それにお前、似てるいるんだ.......もう触れることさえも叶わない、俺の大切な人に。
だから傷付けたくない。
自分勝手で下らない理由だが、だから俺はお前を―――君を傷付けたいとは思えない」
何を今更。
燃える村。焦げ臭い匂いに安否の判らない村の人々。
きっと、いや絶対に彼はこの状況に深く関わっている。
その身に纏う服と手に握る剣の煌めきがそれを証明している。
それなのに。
彼は自分を、シエラを傷付けたくないと言う。
その理由が、自分の大切な人に似てるからなんてそんな理由で。
身勝手だと思った。
「.......もう、その俺の大切な人はこの世界には居ない。
人間に殺された」
―――。
身勝手なことを言うライルに苛立ちさえ覚えていたシエラだったが、続くその言葉に彼女の思考は止まる。
「アイツの仇を討つ。そう決めたから今、此処にいる。
俺は人間達が犯した罪をに制裁を下しているだけだ」
周りで燃える炎が弾ける。
そんな中で彼は一瞬哀しく厳しい顔付きになり、そして薄く笑った。
「お前はそれとは違う。
それにやっぱり、アイツに似ているお前を傷付けるのは気が引ける」
自嘲の笑みを浮かべて言う彼の哀しい蒼が揺れる。
その笑みにシエラは何処か胸が締め付けられるのを感じて、剣を失い空いてしまった手を軽く握り締めた。
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