唐突すぎる王の決断。
確かにロアルは王座に就いた時から、前王のこれまでの方針を反転させて人間に対して非常に好戦的で残酷な政策を掲げていた。
主だった戦乱はあの五年前の戦乱以来無かったが、それでも人間達の国を攻撃してその動きを押さえ付けてきた。
だが、今の世界の情勢。
誰が見ても歴然な程、魔族が優勢で人間は劣勢。
特に目立った動きがあるというのも、聞いてはいなかった。
そんな中での今までとは明らかに飛躍した、この決断。
なにが理由か判らない。
策を急ぐ必要性が、全くと言っていいくらいに見付からない。
だが王の決断はこの国の決断。
従わないわけにはいかなくて、軍議に召集された者達は疑問を抱えたまま頷いた。
それからそのロアルの言葉を為すための準備にそれぞれ追われ、どうにかこうにかその準備を整えたというわけ。
元々そんな事態のための準備の基礎となるものは、以前からあったらためにそれほどは時間がかからなかったのは幸いなことだろう。
準備に追われクタクタになった他の者達は、明日のためにと早めの就寝についた。
その中、最後まで準備に時間をとっていたライルはやはりロアルの意向への疑問が拭い切れずに、とうとうロアルの元までこうしてやってきたのだった。

