その余韻が完全に消えない間に、今度はロアルの返事を待たないでライルは更に続ける。
「当初の予定では、その段階へと踏み込むのは人間達が我々魔族に屈伏しなかった時の、最終手段だったはずです。
.......それを何故、今この段階へと早めたのです?
人間達の動きは現在鎮静化の方向に少しずつですが進んでいます。それをわざわざ策を急ぐような真似をする必要があるんでしょうか?」
疑問。そして戸惑い。
言うライルの声に批判の意は感じられなかったが、その二つが入り交じる。
そもそもの始まりは、つい数時間前にロアルにより緊急に召集され行われた軍議。
この魔族の大国ロマリアに存在する幾つもの軍事的部隊の隊長格、それに加えて軍を陰から支えるかつて軍人であった重鎮達。
その全てが突如、王であるロアルの意向で一同に城へと集められた。
もちろん、先鋭部隊の隊長であるライルもその場に召集されたわけなのだが。
あまりに突然のことで誰もが驚かざる得なかったが、それに拍車を掛けるようにその軍議の中でロアルがとんでもないことを切り出したものだから、集められた者達の動揺は半端の無いものだった。
ロアルが切り出したそのとんでもないことというのが、今ライルを戸惑わせている元凶。
"明日この世界に存在する全ての人間に、人間という種の撲滅を目的とした宣戦布告を行う"という発言であった。

