「?
何を今更。
何故驚く必要がある?お前だって―――」
答えと同時。
彼女が剣を握る手に力が籠もる。
彼女の中で血が沸き立つ。
「っ!」
「なっ!」
ザンッ!
シエラが怒号の勢いでライルへと斬り掛かった。
一瞬のこと。
だがライルはそれを驚く程の瞬発力であと少しの所で避け剣を構える。
「お前いきなり何のつもりだ!」
彼は蒼い瞳を大きく見開く。
何故攻撃を受けたか。
彼には全くその意味が判ってはいない。
「うるさいっ!
魔族が.....人殺しが、気やすく話し掛けないで!」
ザッ....ザンッ!
シエラは再び、ライルに連続で切り掛かる。
――――。
だが相手は男、それに加えて軍人である。
その剣は彼の剣によって軽々と受けとめられてしまう。
「―――っ!
お前さっきから何を言っている?
止めてくれ。
俺の敵は人間だけだ!俺は関係のない奴まで傷付けたくは無い!」
ライルは声を張り上げる。
「私はこの村に住んでいた!
私は人間よ!」
暫く沈黙が支配した。
人間。
彼女の発したその単語だけが、いやにしつこく空間に響きを残す。
「......まさか、人間だと?
本当に、何言っている?
お前から確かに感じる。
このお前から感じる力、どう考えても魔族にしか思えない」
ッ。
「黙れっ!魔族!
変なことを言わないで!
私は魔族が憎い!貴方達魔族が憎くて仕方が無い!
そんな私を......貴方の言葉は人間の私にとって最大の侮辱!」
シエラはそう叫ぶ。
(確かあの時も―――。
........どうして。私は、人間でしょう?)
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