mirage of story








「......ふぅ。
そろそろ夜明けだが、誰も起きてくる気配はねぇな」




毛布に包まって暖を取るジェイドは、顔だけをひょこっと出して傍に立てられたテントの方と先程より明るくなってきた空を交互に見て呟いた。


その呟く声は、外気に触れ白い吐息となって消える。
やはり、毛布の外側は寒い。










「まぁ、もう少し寝かせといてやるか。

あのロキって奴はともかく、嬢ちゃんとカイムは疲れが溜まってるだろうしな」




パサリッ。

そうまた呟くと、毛布から頭だけ出していたジェイドは包まっていた毛布が落ちるのも気にしないで立ち上がる。
毛布が薄い砂埃を立て大地に落ちて、冷たい外気が曝されたジェイドの身体にひんやりと纏わり付く。









「はぁ....はぁあ」



冷たい空気を肺一杯に吸い込んで、グッと身体を伸ばす。

そして大地の地平線の向こうに顔を見せ始めた太陽を見た。
少しだけ眩しそうに、紅い瞳がスゥッと細められる。



それから彼は片手に持っていたランプを下へと置き、もう片方の手に持っていた厚い新世界白書を太陽にかざすように持ち上げた。

太陽を背に受け、その光の眩しさに表紙の深緑色の色味が若干濃さを増す。




パラパラパラッ。

かかげたそれを無造作に捲ってみると、黄ばんだ紙の上に書かれた黒い文字が幾らか映えて見える。