mirage of story










「どうでもよくない!
何故この村が燃えているの?
何故村の人がみんな居ないの?」



一言発する。
その毎に、シエラの声に熱が帯びていく。

熱くなる。
シエラはそこまで言うと、その熱を下げるべく一旦言葉を切った。
それから一呼吸入れ、言葉が続けられる。









「.......それにどうして、どうしてあの男と同じその服を着て貴方は今此処に立っているの?」



その言葉には、憎しみ哀しみそして戸惑いが込められる。

ライルはそんなシエラの勢いに押されたのかもしれない。
蒼い瞳を下へと逸らした。










「!........俺がここに居るの理由は"この世界を平和にする"ためだとさっきも言ったはずだ!
俺は、俺は平和のために此処に居る」




平和。
また紡ぎだされた平和という言葉。

今の状況が平和?
村が燃やされ、村の人の安否も不明。
そんな状況が平和とどんな繋がりがあるというのだ。

平和の意味と現実と彼の発言の矛盾が重なる。









「俺はこの世界を平和にする。
アイツのためにも、必ず。

...........そのために俺は、人間を滅ぼす。
この服は俺がこの願いを叶えるために誓った証」



ライルは下を向けていた視線を上げ、言う。







(滅ぼす......)



ッ。
ライルの口から出た、その言葉に耳を疑う。


滅ぼす。
人間を、滅ぼす。
きっと聞き間違いなどではない。

人間を滅ぼすことが平和というのか。
この男にとっては。この彼にとっては。






(そんな考え方、まるで)









「..........魔族....貴方は、魔族?」




何故、気が付かなかったか。

この状況。ライルが今、目の前に居るという状況。
それに彼が、シエラの記憶の中の忌まわしい姿と重なる事実。


冷静に考えてみれば、すぐに分かりそうなことなのに。
何故、気付かなかったのか。
すぐに確信すら抱ける簡単なことなのに。







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