「は、はい.....多分」
此処まで連れてきたはずのカイムも、あまりの反応の無さを前に心配になってきたらしい。
「ふぅん....そうか」
一瞬チラリとだけ二人の方を振り向いて、すぐにまた視線を元に戻す。
どうせまた目に映るのは、一瞬前と全く変わらない残像かと勘違いするような光景。
そう思いフッとその場所を見ると、そこには廊下の壁に凭れる人の影。
ではなくて、目の前に広がる人の顔。
「うわっ!?」
身体の仰け反らせて、ジェイドが後ろへと飛び退く。
振り返ったらさっきまで無かった人の顔があるのだ。驚きもする。
バッと飛び退き見るその顔。
それはつい一瞬前まで視線の先で壁に凭れいた、その人の顔だと気が付く。
あの一瞬の間に、こんなに近付いたというのか。
しかも一切の気配もなく。
ジェイドは驚き激しくなった動悸を抑えながら、その人を凝視した。
「..............これが貴方がたが言っていた、もう一人か?」
今まで人形のように黙っていたその人......男ロキが、静かに口を開いた。
感情の無い表情でジェイドを探るように見る。
彼の片方だけ長い灰色がかった銀色の髪が、その動作で微かに揺れた。

