ジェイド、それにシエラとカイムの三つの視線が一気にその人影に注がれる。
一点に注がれるその視線の存在感というのは、かなり大きい。
しかも場所が狭い廊下であることもあって、その視線のもたらす圧迫感は倍増する。
「........」
そのはずなのに。
相手は微動だにしないで、視線の送られる方を振り返りもしない。
それどころか、俯き加減のその横顔からは何の感情も読み取れない。
ただそこに人が居るという存在だけしか、感じることが出来ない。
暫らく何も起こらないままで時間が過ぎた。
何も発展しない状況。
その人影が醸す、異様な違和感。
さすがにジェイドも怪訝そうに顔を歪める。
「おい」
「.......」
「聞こえてるのか?」
「.......」
「もしもーし?」
「.......」
その人影へと歩み寄り、問い掛け続けるジェイドの声が独り言へと変わり、虚しく空気に溶け消えていく。
「.............こいつ、生きてる?」
どれだけ問い掛けようと返事もない。反応もない。
まるで人形のようにピクリとも動かないその様子は、静かな異様を放つ。
一言で言えば、気味が悪い。
その末に導き出たそんな疑問を、振り返り同じく視線を送るカイムに向けた。

