mirage of story









「.....仕方ないねぇ」



いくら待っても、壁の向こうの相手は答える気配はない。

壁に手を突き暫らくはそのまの状態で待っていたジェイドだが、このままでは埒が明かないとスッと壁から身を離した。






部屋と部屋を繋ぐ扉。

その間に居るシエラとカイムに手でそこを退くよう合図して、ジェイドは開いた扉の向こうへとゆっくり歩き始める。

扉はジェイドの居る内側に開く扉なので、一歩扉の敷居を越えればすぐに何も答えないその相手の姿が見えるはずだ。





タッ。

ジェイドが躊躇うような間もなく、扉の敷居を踏み越えた。



ジェイドに指示され二三歩引いたカイムとシエラが、扉から出てきた彼を見る。
その視線は数秒彼を見て、それから彼の横をスルリと擦り抜けてその向こうに向けられる。









「......あんた。
何か答えてくれねぇと、こっちとしても困るんだがなぁ」



自分の横を擦り抜け送られる視線を追うように、その先に居るはずの人影へと振り返る。



視界の端に入る人の姿。

廊下の壁に背を凭れ掛けるその人影は、俯き加減でこちらに横顔を見せていた。



その姿がジェイドの紅い瞳の中に映る。