完全に煙が晴れる。
「!」
そして両者が互いの存在に気が付く。
彼の蒼い瞳が呆然となる彼女の姿を捉える。
「なっ!お前何故!」
目を見開きまるで見てはいけないものを見たかの様。
シエラの登場は彼にとっては正に不意打ち。
慌てふためき動揺する姿がそれを物語る。
(何かさっきと違うわ)
そんな彼の姿に感じる違和感。
何かが違う。
そう感じたのは彼の服装のせいだと、暫らくして気が付く。
――――。
服装。
さっきまでは、動きやすそうな黒い服を着ていたはずなのに今は違う。
今は深い濁った草色の軍服。
そして手にはよく使いこまれた剣。
軍人。
それは今の彼に相応しい言葉。
(それにこの格好、どこかで)
彼の格好。
いつの日かこの目で見た記憶があった。
――――。
(!)
そしてある一つの記憶の中に一致するものを見つける。
見つけてしまう。
決して忘れもしない、あの日の記憶の中に。
彼女は、見つけてしまう。
(.......。
ロアルと、あの男と同じだわ)
エルザを失ったあの日の鮮明に蘇る。
復讐を誓った相手の姿も、残酷なほど克明に。
「何故此処に来た!?
此処には近付くなって言ったはずだ、なのに――――」
ッ。
ライルがそう言い終わる前に、シエラの手は握っていた剣を彼の方へ向けていた。
「それは私が聞きたい!
どうして貴方が此処に居るの?
これは貴方の仕業なの!?
答えて.....答えなさいよ!」
シエラは問う。
この状況を前に、シエラには彼を疑うしか術が無い。
今彼女の中でこのライルという男は、最大にして唯一の容疑者。
警戒せずには、いられない。
「そんな理由どうでも――――」
.

