mirage of story

---








こうなることとなった始まり。

それはメリエルで街の散策へと出掛けた旅の仲間、シエラとカイムが困ったような顔をして彼の元へと戻ってきたことからだった。





確か数時間前に此処から出ていった時は、何とも楽しそうだったのに。
手なんかも繋いじゃって、羨ましいことこの上ないような雰囲気だったのに。





.....どうして帰ってきて早々、こんなに困った顔で自分を見るのだろう。

部屋のドアの向こうからジッとこちらを見る二人に、ジェイドはギョッとして思った。






一体、何があったのか?

そう尋ねようと、未だ扉の向こうで困った顔で見つめてくる二人のところへ行こうと、座っていたソファーから立ち上がる。



だがそんな二人の姿の後ろに、もう一つの影を見付けて踏み出しかけた足を止めた。
ジェイドの居る位置からはその影の主の姿は見えないが、ユラリと揺れる影に疑問を感じ眉を潜める。









「おぉ、帰ってきたか。嬢ちゃん達。

どうだい?結構いい街だったろ、此処は。
落ち着いて散策は出来たかい?」




眉を潜め警戒しつつ、でもそれを敢えて表には出さないようにして、ジェイドは軽い笑いを含んだ声で言う。



相手が誰か把握出来ない。

恐らく敵ではないと思うが、念のために誰だか判るまでは気を抜けない。
平然を崩さずに、まずは見極めなければ。




いつも適当に振る舞っているように見えるジェイドだが、実は常に誰よりも冷静に物事を考えている彼である。

判断力と洞察力はかなりのもので、それを普段隠しているのは彼にそれだけの実力が備わっているからだろう。
本当に能在る者は、無闇にそれを表には出さないものだ。