mirage of story

〜5〜







見慣れた村ののどかな風景。
..........。
もうそれは影も形も無い。



家が燃え木が燃え、辺りに充満する焼け焦げた匂い。
村を焦がし舞い上がる黒煙。
辺りに立ち込める異臭が鼻を、そして広がる惨状が胸を刺激する。







ッ。
あまりの変わり様に頭が真っ白になる。






(皆は、村の皆は何処?)



村の中は人の気配は無く静まり返る。
その静けさは異様そして不気味で思わず悪寒が迸る。


静まり返る空間。

炎が燃える音。
自分の足音。
それしか聞こえない。








(?)



そして、ふと気が付く。
さっきまで聞こえていた剣の音が唐突に止んでいた。


どうしたのか。
シエラは消えてしまった剣の音の源を求め、前へと進む足を早めた。

この先には村の広場がある。
取り敢えずそこまで行ってみようと彼女は歩を進めた。






(もう少しだわ)




ッ。
目前の目的地。
彼女はそこへ向かってグッと手を伸ばす。


――――.....。
だが機を見計らったように急に立ちこめてきた煙によって視界が遮られる。

あぁ、何てタイミングの悪い。
シエラの瞳に煙が入り、視界が霞む。
ただでさえあやふやだった視界が煙に覆われる。




霞む視界。
立ちこめる煙。
必死に目を凝らすシエラの瞳。

ッ。
そんな中でうっすらと揺れる一つの影が見えた。






(!人が居るわ!)



村の中で初めて感じた人の気配。

シエラの胸は一瞬希望に沸き立つが、蠢く人のシルエットにその希望は打ち砕かれる。






(!)



その人は剣を持っていた。

村の者でない。
この状況で剣を手に彷徨うのは、可能性から考えるに敵である確率が至極高い。
この村を襲う襲撃者である確率が残酷な程に高い。






 
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