mirage of story




 
 
 

この感覚は――――。








(.......あの日と同じ)


シエラは自分の体から血の気が引いていくのが分かった。




思い出されるあの日。
母さんを失ったあの日。

同じ感覚だ。あの、大切なものを永遠に失った忘れもしないあの時と。





嫌だ。

嫌だ、嫌だ。
もう誰も失いたくはない。



その思いだけで、ひたすらシエラは走り続けた。







「はぁ....はぁ」



そしてシエラは走り続け、再びあの丘の上へ。

木々覆い茂る森をどうにか抜け駆け上がった丘の上。
肺への酸素の供給が追い付かずに、息が切れる。







(ここなら村が見渡せるはず....っ)




小高い丘の上。
この場所からなら、村で何か大きな異変があったなら見て分かるはず。

そう思い、村が見えるはずの方向を見た。




そして、シエラは愕然とした。










(ッ!)



そのシエラの青い瞳に映るのは、空へと舞い上がる黒煙。
そして暮れた空を照らす、メラメラと煌めく炎の灯り。

本来そこには無いはずの、赤の色。












こんなことがあっていいのだろうか。

いや、あっていいはずがないだろう。




あぁ。

村が、シエラの故郷が炎に包まれて燃えている。
.....あの日の丘と同じように。