mirage of story








シエラはこの時、そう思っていた。





シエラは遠ざかるライルの姿をただ見つめる。

不思議な人。
ただそれくらいにしか、この時は思わずに。












「.........あ、一つ言い忘れた」



見つめるシエラの視線。
そんな視線を知ってか知らないでか、ライルは何かを思い出したように足を止めた。





「一つ忠告しておくよ。
今日はこの近くにある村には近付かない方がいい。絶対にだ。

.......俺は関係ない奴まで巻き込みたくはないからな」



「?う、うん」



意味は分からなかった。
だがシエラは反射的に頷きそう答えた。







「ならいい。
じゃあ、俺はこれで」




ライルはシエラの方を軽く振り返り一礼をすると、そう言って静かに暗闇の中に消えた。