mirage of story

 
 




 
 
シエラは頷く。







「うーん、詳しいことは言うことは出来ないんだ」



ライルは困ったようにそう言う。
ふりではなく本当に困っているようで、唸り声を上げて一旦そこで言葉を切った。






「......世界を平和にする。そのための仕事、そんなところかな」





ライルは一瞬、真剣な顔になったがすぐに笑って答えた。








「.....はい?」


シエラはその言葉の意味が分からず、そんな声を上げる。








「世界を平和にするって.....」


「―――とっ。
もう行かないとな。これからその、仕事があるんでね」




意味の分からないライルの言葉。
その意味を尋ねようと再び口を開いたシエラに、またライルの声が掻き消すように重なった。

これ以上尋ねられたくない。
遠まわしなそんな意思表示なのだろう。








「――――俺は絶対この世界を平和にしなくちゃいけない。
そのための、仕事だ」




遮る言葉。
それに続くように何か冷たいような感情を纏った言葉を続けて、彼はシエラに笑ってみせる。

彼の中にチラチラと見え隠れしていた哀愁の影。
これがライルの本当の顔、なのだとシエラは思った。



シエラは何故だかその表情を見てるのがどうにも辛くなって、それ以上は何も問わずにフッと視線を下へと逸らした。











「じゃあ、俺はこれで」



視線を逸らしたシエラへ、ライルが言う。




「あぁ、じゃあ」




その声に逸らした目線をライルへ急いで戻し、反射的に手を振る。
そしてライルは、そんなシエラを背にゆっくりと歩き出した。











(......何だったんだろう?)



ライルが去っていく。


この出会いも別れも偶然。
だからもう会うことなどはない。

ただの偶然で出会った二人の影。
その影は擦れ違い様に一度交わり、また各々の道に向かって歩み離れていく。