(きっと、なんとかなるっ!)
そんな軽い気持ちで、だがとてつもない使命感に駆られて森の中へと足を踏み入れる。
―――そして。
決心して森に足を踏み入れてから約3分。
シエラの歩む足は、だんだんと遅くなる。
そう。やっぱり結局。
「......迷った」
三度目の正直ならず。
シエラは見事に迷った。
しかも入って3分足らずでここまで迷うとは、新記録かもしれない。
(私って....ある意味天才?)
と、シエラは自分の迷いっぷりに感動しつつ辺りを見回した。
来た道を戻ろうにも、その歩いてきた道すらよく分からない。
頼りになるのは月灯りと未だ聞こえ続けるあの歌声だけ。
(んー.....確か前にも同じようなことあったような)
シエラはかつての記憶に同じような状況を感じ、頭の中でそんなことを考えた。
だが唐突に、今まで導いてくれてきた歌声が止みその思考は何処かへ吹っ飛んでしまう。
(歌が.....聞こえなくなっちゃった――――)
焦った。
シエラは物凄く、焦った。
(あの歌を頼りに此処まで来たのに。
此処どこだか分からないし。来なきゃよかった)
止んでしまった歌声。
辺りは月の灯りとシエラの後悔だけが残された。
.......サーッ。
そんなシエラの目の前を、どこからか優しい暖かな風が吹いてきた。
それはこの森の入り口で感じた、歌声を纏っていたあの風と同じであることにシエラは気が付く。
(風?)
その風はまるでシエラを誘うかのように一つの方向に向かい吹き続けている。
そしてシエラは何だか風に呼ばれている気がして、風が流れてゆく方へとまた歩きだした。
月が雲に隠れ、辺りは一面の暗闇。
だけどシエラは歩き続ける。
この風の向こうに行けばきっと何かがある。
何故だかそんな気がしたから。

