〜1〜







「失礼します」



一人の少年がある男の元に呼ばれた。

深い蒼色の瞳、青みがかった黒い髪の少年が。






「待っておったぞ―――ライル」


「......お待たせして申し訳ありません。
王、貴方がお元気で何よりです」




ライルと呼ばれた少年はその場に膝をつき、丁寧な言葉遣いで話す。
だが、その話し方に慣れていないらしく何だかぎこちない。

どうやら普段からこのような口調ではないようである。






「改まらなくてもよい。
ライル、お前は特別だ」


「っ.....しかし、そういうわけには」




王と呼ばれたその人は、そんなぎこちないライルを前にフッと微かに口元を綻ばせて言う。

だがライルにしてみれば、目の前にいる彼は一国の王。
改まらないはずがない。







「ライル。
お前は我が同士。遠慮をする必要などない」



王と呼ばれたその人は、何か言おうとするライルに強い口調で言う。

その言葉にライルは驚いたような表情を見せ、そしてフッと肩の力を抜いて呆れたように笑う。







「.....今の俺は庶民です。
王のあなたと前のように話せるがわけない」



ライルの言葉の中にあった緊張が一気にほぐれる。
半ば諦めたような、そんな笑いを浮かべていた。

その空気に男も薄く笑う。




今、二人がいるのは城の中。

そしてライルを呼び出した男はこの国の王であり、この城の主。
王である男と少年ライル。そんな二人がこの空間で対面をしていた。



緊張の糸がほぐれたライルは部屋の中を、何処か懐かしむように見回す。

ふぅっ。
そして一つ息をつくと、再び王と呼ぶその人に視線を戻して何か意を決したように口を開いた。








「......ところで、何で俺を今日此処に?」



気になっていた疑問を、今自分が此処に居る理由をライルは口にする。


此処にはもう、二度と来ることはないと思っていた。

なのに今、自分は此処に居る。
その理由が、知りたかった。