―――。
心配そうな視線を送る彼女を彼はちらりと見る。
今まで自分を睨み付けていた瞳は少しだけ潤んでいた。
どうやら本気で彼を心配しているらしい。
強いことを言ってはいるが、やはり女の子。
男として女の子を泣かしてはいけない。
それがこの男のポリシーである。
ッ。
そんな彼女の様子に小さく溜め息をつくと、少しだけ笑って口を開いた。
「安心しな。
そんな苦しそうな顔してるわけでもないし.....すぐに目を覚ます」
フッ。
その笑顔はさっきまで張り付いていた軽い心の読めない笑みから少しだけ変わった。
何処か優しい見るものを安心させるような笑み。
僅かな違いだったが、その笑顔を向けられる本人には分かった。
―――。
そんな笑みを浮かべるジェイドを一瞥して、彼女はそのまま小さく頷く。
「じゃあ、向こうに運ぶから嬢ちゃんは部屋の準備をしてきて。
力仕事をか弱い女の子にやらせるわけにはいかないんでね?
いいかい?」
「.....分かりました」
っ。
コクリと頷き返事をする。
寄り添っていたカイムからスッと身を引き、奥にある部屋へと彼女は駆ける。
やれやれ、とシエラの後ろ姿を見てジェイドは顔に穏やかに笑みを浮かべたまま倒れる問題の彼へと視線を戻した。
「ったく、仕方が無いねぇ.....全く」
――――。
そう微笑しながら小さく呟いて、ジェイドはカイムへと手を掛けた。
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