端から見れば異様な光景だが逆に異様な迫力がある。
「嘘よ!
じゃあ、何でカイムが倒れてるの!?
此処には貴方とカイム以外、誰も居ないじゃない!」
物凄い剣幕。
問い詰める彼女のジェイドを睨み付ける視線が痛い。
―――。
だが、こんな状況でも当の本人であるジェイドの顔には軽い笑みが張りついたまま。
それが無意識であるのか故意であるのかは、出逢ったばかりの彼女には定かでない。
「だーかーら、嬢ちゃん!
何か誤解してるって!
俺は何もしてねぇ。
こいつがいきなり倒れただけなんだって!」
ジェイドは襟首をシエラに掴まれたまま、軽く笑いながら事の状況を説明する。
「いきなり倒れたって、何にもないのに倒れるわけない!」
ジェイドのヘラッとした態度に段々と彼女の中に苛々が募る。
(......何か、この人よく分からない人ね)
苛々の募る頭の中で、シエラは思った。
出逢ったのはついさっき。
しかもそれはただの偶然。
時が経てば、やがて忘れる擦れ違いのような出逢い。
これから先、関わることなんてもう無いはず。
そのはずなのに....何だか凄くジェイドの笑みが気になった。
―――。
彼のその笑顔には裏がある。
心からの笑みでない何か凄く深いものがある。
赤の他人でしか無いはずなのに、彼女は凄く気になってしまった。
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