――――。
片手で剣を握ったままもう一つの手で胸元にある指輪を握り締める。
ッ。
グッと不安から力が入り、手の平にめり込む指輪の硬さが少し痛い。
(私は彼のことを母さんや村の人を殺した人殺しだと思う。最低な奴だと思う。
────。
だけどもしかしたら私の方が)
シエラの脳裏に蘇るのは、自分の憎むべき者の哀しすぎる表情。
大切な人を失った哀しみに藻掻く彼の顔。
.......。
ふと思い出されたその顔は彼女に言うのだ。
"この、人殺し"と。
記憶にはない。
だけれど、この手でライルの大切な人を殺してしまったのかもしれない。
そう考えるとどうしようもないくらい手が震える。体が震える。
(........駄目だ、胸が痛い)
殺されたエルザの仇討ち。
そう心に誓い、復讐の道に身を投げた彼女。
強く誓ったはずの心だけれど時々、今のように逃げ場のない不安に襲われる。
一見、強く生きてるように見えるシエラ。
でも本当はいつ壊れてしまうか分からないほど、脆い。
彼女は儚い。
(もう考えるのはやめよう。
私は私────。
今はそれを信じるしかないのよ)
ッ。
心の中に沸き上がる不安を掻き消すかのように首を横に振った。
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