(もう、無理)
体半分をベッドから投げ出して、片手片足で何とか保っている状態。
正直かなり無理がある姿勢。
―――。
それでも落ちないようにそんな状況を脱すべく投げ出された体を反らして、片足を床へと付ける。
そしてそのままゆっくり体重を下へ移動させる。
無事、着地は成功した。
「ふぅ。
そういえば、カイムどこ行ったんだろう?」
これで一安心。
無理な体勢で少し痛めた腰を擦りつつ立ち上がり、部屋を見回した。
だが、やはり求める彼の姿は無い。
眠っている間に何処かに行ってしまったようである。
(まぁ、すぐに戻ってくるわよね。
あんな人だらけの街に行く元気もないし.....このまま此処で、少し待っていよう)
見えない彼の姿に心配はしたものの彼女には彼が帰ってくる確信が在ったので慌てはしない。
―――。
軽く伸びをして部屋の真ん中にある小さな椅子に腰を掛ける。
目の前のテーブルの上には、綺麗に畳まれた上着と彼女の剣。
「.......これ」
視界の中に、静かに横たわる剣を見つけるシエラ。
紛れもない自分の剣。
ッ。
彼女はおもむろに手を伸ばして、それを掴む。
細かく彫刻が刻まれた柄。
少しだけ錆びかけた鞘。
鞘には傷がたくさん付いていて、使い込まれた物だということが見て取れる。
.......。
正直に言ってこうやって見る限りは、何の変哲もない普通の剣である。
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