キトラの危惧。
嫌な予感。
それはライルが心で察したものと一致し、またその予感は当たってしまったのである。
気まずい沈黙。
蒼白する彼を一度見て、それからライルは視線を下へと逸らして口を開いた。
彼はまだ子供だ。
ライルもまだ十分に子供と言える歳だが、彼をそれより更に若い。
だから、こんな過酷なこと言いたくもないし、させたくもなかった。
「............明日の日暮れに此処を経ち到着次第夜を待って闇に紛れて潜入する。
詳細は現地で話す。
後は各自に明日の出発に間に合うよう準備を。
話は以上だ」
「は、はい!」
――――。
だが子供とはいえど彼も軍人。
先鋭部隊の一員。
彼にだけ、そんな勝手は許されない。
ライルはキトラの姿に締め付けられる胸を抑えて、静かな声で言った。
「........」
キトラは、何も言わなかった。
ッ。
無言のまま背を向けて一人部屋を出ていく。
そのキトラを何人かが心配して追い掛けて、部屋の中は少しだけ広くなった。
「あ....あの隊長」
キトラが部屋を去る。
少しだけ広くなった部屋の中で言葉を発してからずっと俯き加減のライルへ、一人が声を掛ける。
「.........。
何だ?」
俯いたまま答える。
「...........あいつには、キトラには今回の任務は少し酷です。
今回はキトラを外した方がいいんじゃないんですか?」
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