指輪を持つ者の追跡と討伐。
確かにそれが今回の出撃の目的である。
「.........」
だが、それが全てでは無かった。
出撃の目的は、一つでは無かった。
ッ。一回息を深く吸う。
ライルはしっかりとキトラの方を見た。
「指輪の奪還、勿論今回の出撃の目的はそれだ。
...............だが、それだけじゃない」
「っ!」
表情が歪む。
キトラの中の安堵感が見るも無惨に打ち砕かれる。
再びの緊張感と纏わりつく嫌な予感が彼を襲った。
「先日アトラスの街に反逆者が潜伏している可能性が有ると報告を受けた。
...........今回の出撃はその反逆者の―――つまりジェイドの討伐も兼ねている」
「!」
キトラの顔は一気に蒼白した。
ッ。血の気が引き、表情が消え失せるのを周りに居る誰もが分かった。
「..........」
周りの者はそんな彼から目を逸らし沈黙する。
興奮で満ちた先程とは一変。
辺りは静まり返った。
誰もが彼にどんな言葉を掛けるべきか分からなかった。
――――。
ジェイドという男。
それはキトラがまるで本当の兄のように誰よりも心から信頼する存在。
周りに居る誰もが、それをよく知っていた。
だから何も言えなかった。
討伐。
つまりは彼のその大切な人を討つ、殺すのである。
それが任務である以上、彼に拒否権は無い。
命令が下った以上、此処では一切の個人的感情は放棄しなければならない。
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