mirage of story

 
 
 
 
 
 
 
そんな興奮の色濃くなる空気の中。
一人何処か浮かない様子の者が居て、その者はつまりキトラは恐る恐る手を挙げる。







「何だ、キトラ?」



そんなキトラに気が付き視線を注ぐライル。












「先鋭部隊の出撃なんて、滅多なことが無い限り出されることは無いことです.......今回の出撃、一体目的は何なんですか?」




恐る恐る聞く。

そう。
何度も言う様だけれど彼等先鋭部隊は他の部隊とは違い特別な部隊である。
故に出撃命令など、本当に特別な目的が無い限りは発動されていないのが今までだった。



―――――。
つまりそんな彼等に出撃命令が出された今は、何か特別な目的が定められたという証拠。

他の部隊には任せられないような何か重大で重要な任務が、今回の出撃にはあるということになる。










「..............アトラスに指輪を持つ者が現れるかもしれない。

今回の出撃の目的俺達に科せられた任務は、指輪を持つ者―――逃亡者シエラを捕らえることだ」



「っ!
指輪というのは、最近発見されたというあのルシアス様の指輪ですか?」



「あぁ」





ライルはなるべく感情が表に出ないよう、簡潔に出撃の目的を述べた。

ルシアスが関わることとなれば無意識の内に彼の熱は上がり、感情が抑えられなくなる。
彼自身それが判っていた。










「姫様の指輪、逃亡者........」




そんなライルの感情を抑えた言葉に、キトラは密かに安堵を覚える。

出撃の目的。
安堵の理由はキトラが想像していたものと今回の出撃の理由が異なっていたからだ。










「........」




ッ。
ライルはそんな彼の心の内を感じ取る。
安堵感の理由。
ライルにはそれが判ってしまう。

........。
だからこそ、ライルはその安堵する彼の姿に表情を曇らせてしまった。








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