mirage of story

〜6〜









「簡潔に述べよう!
今回召集したのは他でも無い。
つい先刻ロアル様から直々に我等先鋭部隊に出撃の命が下った!

出撃地はアトラス。
魔族と人間の領域の境辺りに位置する四方を砂漠に囲まれた交易の街だ!」




ライルが独り哀しい呟きを落として程なくして、彼の部屋は軍議室と化した。

集まるは十数人の男達。
言っては悪いがむさ苦しいことこの上無い。



久々に行われる軍議。
このような軍議は、滅多にはない出撃の命令が下された時にだけ行われる。

部屋の中に居るのは、ライルも含め男ばかり十九人。
もちろんその中には、先程の少年兵士もキトラも含まれていた。




.........。
十九の先鋭の者達。
だが今から少し前まではこの先鋭の者は二十人居た。

一人この場に欠落した男、その男の名はジェイド。
キトラが"兄貴"と慕う人物だった。









「.......交易の拠点とも呼ばれる街、アトラス。
出立は明日の日暮れ!
他の部隊とは結託せず、俺達の部隊単独での出撃となる」




ライルの言葉。

ッ!
周りの兵達はどよめき、瞳の中に飢えた獣のような光を宿す。









「ハッハッ!血が騒ぐ!
久し振りだ!出撃命令など」



久々の出撃。
血の気の多いこの者たちにとっては、これ以上ない程の朗報。

興奮する気持ちを、抑えきれないようだ。
猛々しい気が部屋の中に満ちてきて、少しだけ部屋の温度が上がった気さえした。









「─────隊長」




 



.