彼女の居ない世界を支配する虚無感が彼の胸を刺す。
(──────死ぬべきは、お前じゃなかった。
死ぬべきは、戦争を仕掛けてきた人間だったのに)
ッ。握り締める拳。
自然と力が籠もっていくのが分かった。
怒り哀れみ、悔しさ。
そんな感情に似た思いが、身体から沸き上がる。
――――。ッ。
彼の静かだが決して消えることのない復讐の灯火が、穏やかに吹き込む風に揺らめく。
(だからお前が俺のことをどう思おうと、例え軽蔑されようとも......俺は奴等を倒すと決めたんだ。
必ず、お前の仇を討つって。
例えそれがお前が望んでいない戦いの末にあるものだとしても)
答える者の居ない空間で問い続ける。
そんな彼はずっと庭へと向けていた瞳を、スッと月が煌めく澄んだ空へと移した。
(.......それがお前を守り切れなかったせめてものお前への償いになることを、俺は信じている)
──────タッタッタッタッ。
輝く月の光に彼女を見た。
そんな静かだった彼独りきりの空間に、遠くから足音が迫ってくる。
きっと先程慌てて他の兵を呼びに出た者達が、戻って来たのだろう。
........。
その足音を聞いて、ライルは覗き込んだ窓から静かに離れた。
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