(.........)
思い出の庭の先に、懐かしいあの頃の記憶の中に引き込まれていた彼は現実へと戻る。
窓から流れ込む彼の髪を微かに靡かせる穏やかな風。
不意に戻された現実は、冷たくて静かだった。
「.........」
"誰も傷付かなくてもいい世界"
思い出された約束に傷む胸を押さえる。
(ルシアス.....。
俺が今、お前のために誰かを傷付けていると知ったら────お前はどう思うだろうか?
喜んで、くれるだろうか?)
彼は心の中で問い掛ける。
(............いいや、きっとお前は喜んではくれないだろうな。
寧ろ俺のことを軽蔑するかもしれない)
自問自答。
自分以外、答える人は居なかった。
その問い掛けに一番答えてほしいその人は、もう居ない。
―――――。
ルシアスは相手が誰であろうと人が傷付くことを嫌がった。
誰も傷付かなくていい、本気で彼女はそんな世界を望んでいた。
魔族であろうと人間であろうと。
彼女は全てに平等に優しかった。
(────だけどな、ルシアス。
.......俺は、俺はどうしても納得出来ないんだ。
どうしてお前が死ななきゃならなかった?
どうして誰よりも平和を望んだお前が、死ななきゃならなかったんだ?)
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