「何だか怖くて、あんな風にされてる人達が居ることを知らなかった私が何だか凄く嫌だったの。
恥ずかしかったの。
だって私、姫よ?
なのに苦しんでる人が居るって、気付けなかったの」
ルシアスの声は微かに震えていた。
沸き上がる感情を、何とか抑えようとしているのだろう。
そんな彼女を宥めようとライルは彼女の肩に手を伸ばしかけたが、必死に抑えようとするその姿に静かに手を引いた。
「........でもそれはしょうがないよ。
俺達はまだ子供なんだ。知らなくて、当然だよ」
代わりに言葉を掛ける。
だが上手い言葉が見つからなくて少しあたふたする。
「でもね、ライル。私はこの国の姫なんだよ?
この国を.....守っていかなきゃいけないの。
なのに目の前で苦しんでる人一人、助けることが出来なかったんだよ」
ルシアスの声の震えは、次第に涙声へと変わる。
――――。
閉じられた瞳からは一筋の涙。
その涙はキラキラ輝きながら落ちて、乾いた地面をほんの少しだけ湿らせた。
.....。
ライルはルシアスに何か言葉を掛けようとするが、掛ける言葉が見つからなくてただそんな彼女を見ていた。
風が吹き抜け日が射し、穏やかなこの場所。
そんな空間で彼女は暫くライルに見守られ泣いていた。
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