娘であるルシアスのその話に王は苦い表情を見せる。
ッ。
眉間に皺を寄せ、肘掛けに肘を突いた。
これは王があまり良くないことが起こった時にする癖みたいなもの。
ちなみにルシアスが悪戯をしてそれを怒る時も同じ顔をする。
「父様、どうにかならないの?
人に対してあんなことするなんて......私、見ていられないわ」
彼女は、優しい心を持っている。
だからどうしても、さっきみたいなことを放ってはおけなかった。
―――――。
必死に訴えてくる娘の姿に、父は一つ深く息をついた。
「ルシアス、私もあのような差別はいけないことだと思うよ。
なくさなければいけない、そう思っている」
「だったら、だったらどうしてなくならないの?
父様は王様でしょ?
王様は全ての民のために働かなきゃいけないって、父様いつも言ってるじゃない」
彼女はその小さな体を大きく使って真剣に、そして一生懸命に自分の思いを訴える。
彼女の言葉は率直で、そして何より正当だった。
ッ。
その姿を見て王は小さく微笑み大きな手のひらで真剣なルシアスの頭を、優しく撫でた。
「ルシアス。
お前の言いたいことは、私にもよく分かる。
.....だけれどね、民の中に根付いている意識を変えるのは容易なことではないのだよ。
すぐに出来ることではない。時間の掛かることなんだ」
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