........。
それでもまだ言葉は無い。
「どうやらお分かり頂けたようですな。
さぁ、姫様。そこをお退き下さいな?
今、それを片付けます」
無言のルシアスを前に男は"卑しきもの"を高貴なる姫の前から片付けるべく奴隷と呼ばれたその人に手を伸ばす。
─────。
ッ!
「ひ、姫様!?
一体何をなさる―――」
だが伸ばされた男の手が奴隷と呼ばれたその人に触れることは無い。
触れるその代わり。
何かを弾いたような音が響く。
――――。
何故、男の手がその人に触れられなかったのか?
ルシアスは真剣で、尚も強い眼差しを手を伸ばす男へと向けた。
「お黙りなさい!」
張り上げられる凜とした強い声。
周りに居る者、全ての者が驚いた。
眼差しを向けられている男もライルも子供たちも、皆が驚いた。
「.........貴方にその人をどうこうする決定権は無いわ。
その人をお城に運びなさい。
これは姫である私からの───命令よ」
見開かれ男を見詰める彼女の瞳は、とてもまだ幼き少女のものとは思えぬ光を帯びていた。
それは鋭くて強くて、そして哀しい。
伸ばされた男の手が止められて、そして誰もが彼女の言葉に驚く。
「で、ですが」
「いいから早くなさい!」
伸ばされた手をしっかりと掴み威厳ともとれる威圧感を放つ彼女。
――――。
そこに在ったのは街の子供達と無邪気に駆け回る少女の姿ではない。
在るのは国を、そして民を守ろうとする凛々しい王女としての姫としての姿。
........。
ルシアスの言葉に、静まりかえる一同。
幼いルシアスが発しているとは到底思えない程の威圧感が一気に辺りを支配した。
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