「ルシアス姫様ぁ......」
あまりに当然のようにきっぱりと断言する男に、子供達は混乱を覚えて気持ちが揺らぐ。
そもそも差別という言葉の意味を知らぬこの子達には、何が正しく何が間違っているのか判らない。
「僕にはよく分からないけど、きっとそういうことなんだよ。
だから、もうあっちに行こうよ.....ルシアス姫様」
男の言葉に他の子供達は口々にそう言い始める。
奴隷は、奴隷。
普通の人より格が下の存在。
子供達にその意識は無いが、どんどんと周りが世界がそんな差別に納得していく。
「.........」
そんな中でルシアスは黙りこくったまま。
何か考えるように黙り込んでしまう。
「ルシアス?」
そんな様子を心配し、ライルは小さく声を掛ける。
.........。
だがそれでもルシアスは黙ったまま。
何か言って欲しかった。
ライルもこの時幼くて差別の意味はあまり理解出来なかったけれど、理解出来ないながらも今自分の前で行われていることは良くないこと。
それは判った。
そして恐らく彼女も同じように感じていることも。
心の何処かで判っていた。
「..........」
だけれど何も言わずに黙り込む彼女。
何も言わないままに他の皆と同じように彼女までもがこの現実に納得してしまうのは、何だか凄く嫌だった。
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