mirage of story







そして無言のロアルが、ようやく口を開く。






「.....あぁ、本当に賢い奴だ。お前はやはり前と全然変わっておらんようだ」


ハハハッと、壊れたような笑いが聞こえる。

これは、危ない。






「.....私はな、賢い奴が好きなのだ。賢い者は私の使える駒となる。

だがな―――」




ロアルは怒りを抑えているのか、無理矢理笑ってそう言った。

その無理な笑顔。
それが余計に恐かった。






「だが....その賢さが我が手に入らぬというのなら、消し去りたくなるのだよ。
まさにお前のような者はな」






(......消し去りたくなるって)




シエラはその言葉の意味を知り、冷汗が流れるのが分かった。

消し去る。
直訳すると、お前ら死ね。




(......恐っ)



そんなロアルの怒りを、ようやくエルザも感じとったらしい。







「ん....怒らせちゃったみたい。
ちょっとまずいわねぇ」



ちょっと苦笑い。
まずいわねぇ、そう言ってる割には緊迫感はない。


ふぅ。
一つ大きく、彼女は息をついた。




そしてエルザは真剣な顔に戻ってシエラに小さな声で言う。








「―――シエラ、貴方は......その指輪を持って逃げなさい」




(え?)



シエラはいきなりのエルザの真剣な言葉に戸惑う。






「......逃げるんなら、母さんもいっしょに逃げよう?
じゃないと母さん、アイツに殺されちゃうよ」




今ここで、逃げなければロアルから逃げる機会はあるかどうか分からない。

だから一緒に逃げなくては、シエラはそう思った。


だが。