兄貴の手を握り、一緒に歩き出す。
――――。
暫らくして兄貴は、思い出したかのように聞いた。
"あ、そういえばお前―――名前何て言うんだ?"
名前。
そう聞かれてハッとした。
自分がまだ名乗っていないことに気が付く。
キトラ。
幼い俺はしっかりと彼の手を握り締めたまま答える。
俺の名前を聞いて兄貴はいい名前だと褒めてくれた。
笑いながら俺の頭をガシガシと撫でる。
ちょっとだけ痛かった。
――――。
でもその痛さが何だか嬉しかった。
だから俺も一緒に笑った。
.........。
優しくて強くてそして格好良い人。
今度は俺がその名を訊ねる。
俺はこの人の名前を忘れまいとよく耳を澄ました。
"あぁ、俺の名前か。
ハハッ!よく覚えておくんだぞ?
俺の名前は――――"
前にも後にもこの時程に耳を澄ましたことは無かった。
"ジェイドさ"
俺が生涯で一人兄貴として尊敬する人名前。
しっかりとその一つ一つの響きをしっかりと記憶の中へと留めた。
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