.........。
前を向くことさえ諦めていた。
何も無くなってしまった全てを失ってしまったあの時、俺はもう生きることを怖がってしまっていた。
ッ。
そんな俺に一瞬だけ哀しそうな顔を見せた兄貴。
でもそれからまたすぐに笑って言った。
"─────。
全部無くなってなんかいないじゃないか。
確かに無くなったものは、大きいかもしれねぇけど全部は無くなっちゃいない。
ハハッ!見てみろ?
ほぉら、まだちゃんと坊主―――お前自身が残ってるだろう?
その一番大きな存在が。
他の何もかもを失ったとしても、自分さえそこに在ればやり直せる。
終わりじゃないんだよ"
俺はただ呆然と兄貴を見た。
兄貴はただ笑って頷いた。
.......。
その笑顔が何だか凄く眩しくて。
強くて優しくて。
ッ。いつの間にか俺の涙は止まっていた。
"さぁ、坊主。
俺と一緒に来ないかい?
俺が、まだお前の人生終わりじゃないってこと証明してやるよ?"
自分の頭に乗せられていた手が、スッと目の前に伸びてきた。
ッ。
その差し出された大きな大きな手を俺は無意識の内にしっかりと掴んだ。
その手はまるで陽だまりのように暖かくて、何だか凄く安心出来た。
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