話をしていた兵士の一人。
キトラと呼ばれた少年は冷や汗を流しながらぎこちなく振り返る。
――――。
今後ろに居るはずの自分の部隊の隊長。
つまりライルに手を振った。
その顔には笑顔。
だがその笑顔何処と無く、いやかなり引き吊っているのが判る。
額にはほんのり汗も滲み始めている。
「おや、キトラ。
俺がどうしたって、ん?」
そんなキトラ少年を前にして偶然にも自らの噂話の現場に鉢合わせ手しまったライルは、不気味な程にこやかな笑顔を向ける。
呆れの意も込められたその視線。
この状況では無力であるキトラともう一人の話し相手の少年に突き刺さる。
「.....いや、あのえっと」
その視線に耐えきれなくなったキトラの隣の少年兵士は次第にパニックを起こし始める。
こういう状況に出くわしたことがない彼にとっては、耐えられなかったのだろう。
口をまるで魚みたいにパクパクさせて、目はあちらこちらに泳いでいた。
――――。
そんなパニックを起こして慌てふためくその兵士にライルは何だか彼が可哀想に思えて向ける視線をキトラだけへと逸らした。
きっとこの少年は、このキトラの話に仕方なく付き合っていただけ。
つまり巻き添えになっただけだと何となく分かっていたから。
可哀想な被害者の彼には、何も問わないでおこう。
そう思った。
「─────また俺の変な噂を、流したりなんかしてないよな?
.....まさか。そんな訳ないよな、キトラ君?」
ライルは、笑顔のままキトラににじり寄る。
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