ッ!
求める者。
名は出されなくとも、彼の中に浮かぶのは一人しか居ない。
「あの女が、指輪を持ったあの人間がその街に?」
浮かぶは少女。
燃え盛る炎の中、衝撃的に出逢った大切な人の仇。人間。
憎むべき敵。
その姿を思い出して彼の中で感情が沸き立つ。
「あぁ、恐らく。
あの街には情報もあれば、奴等の必要とするはずの物資もある。
その上に人も多く紛れるには絶好の街、立ち寄る可能性は極めて高いとは思わぬか?」
ッ。
そして笑う、嘲るように笑う。
「.......奴等は人間という卑しく愚かな存在でありながら我々に立ち向かってくるようだ。
フハハ―――浅ましい、だが面白いではないか。
奴等は今、我々の情報を喉から手が出る程に欲しているはず。
故に情報溢れるあの街に奴等は必ず現れる、それもそう遠くない日にな」
「必ず....現れる」
「その機を逃すわけにはいかぬであろう?
そんなアトラスへの出撃、これはお前に―――我が国の誇る先鋭部隊に適任と思ったのだがな?」
そう言う。
敵を嘲笑うロアルの瞳には狂気の光が帯びる。
――――。
そんな彼の闇色の瞳には、アトラスの街で指輪を持つあのシエラという少女を討ち果たし、そして指輪を奪う光景がまるで現実のように流れていた。
それは現実よりも現実染みたその光景で、彼に浮かぶ笑みの闇は一層に濃くなった。
「........」
そんなロアルを前に、ライルの頭の中にも思い描かれる光景があった。
ッ。
剣を構え向け合う自らの姿と討つべき敵の彼女の姿。
敵であるシエラと自分が対峙する光景は浮かんで当然の光景。
だがその後で広がったのは斬り合いの末に勝ち取る勝利の光景ではない。
.......。ッ。
浮かんでくるのは何故か呆然と立ち尽くす自分と、哀しげな瞳でこちらを見るだけの彼女の姿。
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