「ッ!」
先鋭部隊の出撃。
その言葉に衝撃が迸る。
争いの世、そしてライルは軍人である。
そうであるのだから、出撃命令など珍しくは無い。
そのはずであるのに、ライルは思わず驚きと衝撃に身を震わす。
――――。
だが驚くのも無理は無いのである。
国家先鋭部隊。
それはこの国の誇る、最も選れた者たちが集まる国で最も強い部隊。
他の部隊とは訳が違う。
ッ。
彼等が直々に出撃することは滅多に無い。
何故ならば大抵の出撃任務は彼等の元に来る前に彼等より下の部隊の手で片付けられるからである。
手助けとして他の部隊の指揮を執ることはあっても、先鋭部隊自身に出撃の命が下ることは滅多にあることではない。
それは隊長であるライルも例外ではなくて、個人的に命を受けて動くことは度々あっても部隊という括りで出撃をするということは彼にとって驚くべきことなのである。
――――。
現に先鋭部隊としての仕事をしたのはライルが隊長という座に就いて一年程経つが数える程しか無い。
そんな部隊に突然の出撃命令。
まさに不意打ちだった。
「出撃地はアトラス、交易の街として名の知れる人間共の街だ。
まぁ人間共のとは言えど、交易のために魔族も多く紛れといると聞く珍しい街。
場所は先刻攻め入ったランディスという今は無きあの廃れた街の近くぞ」
衝撃を受けるライルを余所にして淡々と言う。
「アトラス.......入ったことはありませんが、その名は耳にしたことがあります」
衝撃は止まないまま。
だがいつまでも驚いているわけにもいかずに、ライルは答える。
「そうか。
.........ライルよ、恐らくであるがその街にお前の求める者が居る」
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