あのメモは指輪を持つシエラを、この場所へおびき寄せるための罠でありシエラは見事にその罠にはまった。
つまり、そういうことだった。
(.....もう何なんなのよ、この状況)
シエラはだんだん、何が何だか分からなくなってきた。
何故エルザがあんな奴らと知り合いで、どうしてロアルはこの指輪を狙っているのか?
そもそもこの指輪は本当にロアルがいう水竜の指輪とかいう何か凄い指輪なのだろうか?
だとしたら、その指輪を何故自分が持っているのだろうか?
考えれば考えるほど、分からなくなった。
今自分が何をすればよいのかも分からなくなって、軋む頭を抱えシエラはただ座り込むことしか出来なかった。
「う.....あ...っ!」
誰かが呻く声がして、ハッとしてシエラは我に返る。
聞こえてきた呻く声。
そして何が起こったかを把握するため、エルザたちがいる方を覗き込む。
ッ!
視線の先。そこには重なり合う二つの人影。
そこにはロアルに首元をつかまれ、藻掻くエルザの姿。
「―――何も答える気がないのなら、もうお前に用はない。
残念だ。お前は他の人間どもとは違い、もっと賢い奴であると思っておったのに」
ロアルの口元から微かな、しかし不気味な笑みがこぼれる。
そのまるで苦しみもがくエルザを見て楽しむかのような笑みに、シエラは物凄く不快感を覚える。
一発。いや、十発くらい殴ってやろうかと思った。
ザッ。
そして気付くと、シエラは隠れていた草陰から飛び出していた。

