そして男のまわりには何人かの仲間らしき男たちが並んでいて、その前にエルザが一人。
そんな状況だった。
背の高い男たちに囲まれた小柄なエルザ。
端から見れば、蛇に睨まれた仔兎状態。
そのはずなのだが、手を腰に当て男たちを見上げ仁王立ちしている彼女はとてもじゃないが、可愛い仔兎ちゃんには見えなかった。
「知っておるはずだ、言え。
水竜の指輪を持つ者がこの村に居るのは、もう分かっておるのだぞ?」
「.....しつこいわよ、さっきから言っているでしょう。そんなこと私は知らない。
だいたい何故私が、そんなことを知っていると思う?
人間のこの私に。
そうではないのか、ロアル?」
ロアル。
それがあの男の名前らしかった。
(....何で母さん、アイツの名前知ってるの?
それに水竜の指輪って)
シエラにはただ、あの男の名前はロアルでエルザとは何だか知り合いであるらしい。
そんなことしか分からない。
何なのか。
今、どんな状況であるのか。
そう考えを巡らせる中でシエラはふと、さっきの会話の中の言葉を思い出す。
(指輪?)
シエラは指輪という言葉から、自分の首から下げている指輪を見つめ今日の森での出来事を思い出した。
シエラがいつも肌身離さず持っているこの指輪。
それが、森の中でロアルと呼ばれているあの男が持っていた石と共鳴するかのように光を放ったことを。
あの不思議な出来事を。
(....まさか、アイツの言ってる水竜の指輪ってこの指輪?)

