「......ゴホンッ。
旅の御方も一度落ち着いて話してくだされ。
貴方は今敵が襲撃しに来たと仰いましたな?
―――。
だがしかし襲撃してきたにしては静かすぎる。
もしや何か勘違いをなされてるのでは?」
老人はそう言うと、静かになった部屋の中で耳を澄ます。
........。
特に物音はない。
ただ老人のその声だけが響きシンッと静まり返る。
確かに言う通りだった。
敵の襲撃。
それを叫ぶにしては静かすぎた。
「ッ!勘違いなんかじゃない!
さっき俺は外から不穏な気を感じて見に行ったんです!」
静まり返る空間。
静かだ。
とても魔族が襲撃して来ているとは思えない。
........。
だがカイムはこの目で見た。
こんな状況であっても引き下がる訳にはいかない。
今度はカイムの声が崩れ掛けている廃墟の壁に反響する。
「此処の入り口まで行くと俺は気配を感じて壁に身を隠して様子を伺いました。
.........。
そしたら外から話し声が聞こえたんです、男の声が」
カイムの瞳が、老人を強く見据えた。
強く訴えかけるような瞳が老人を捉える。
「聞き覚えのある声でした。
絶対に危機違えることの無い低くおぞましい声。
嫌な感じがして隙間から覗き込むと奴が、ロアルが。
ロアルだけじゃない......他にも何人か居るようだった」
神妙な面持ちのカイム。
老人は深刻さを覚えたのか一つ唸り声を上げると口を開いた。
「────。
外には魔族が居たのですな?」
「はい」
考え込むように、老人は視線を落とすと再びカイムに視線を向けた。
「.....でしたら、今ここから離れるのは危険なのでは?」
老人は、尚も落ち着いていた。
「この場所はお話しましたように私の力で守られております。奴等は手を出せません。
此処は絶対的な我等の砦。
奴等に崩す術など無い。
ご安心下さい」
......。
カイムは失望した。
老人は今の事態をそう重くは捉えていないようだった。
ッ。
そして老人の言葉は街の人達に伝染するように安堵の表情を呼ぶ。

