mirage of story

〜4〜







「ただいまぁ!」



家に着く頃にはもうだいぶ陽が落ち、辺りは暗くなってしまっていた。

だがそれでも何とか迷いながら家へと辿り着いたシエラは、そう勢いよくドアを開ける。
無事に家にたどり着けた安心感で、思わず声が張った。



玄関の扉を入った所で、シエラは返ってくるはずの返事を待つ。

.......。
だが、返事はない。







「あれ、母さん?」



いつもなら出迎えてくれるはずのエルザの姿はなかった。


家の中は、エルザがいないということ以外、変わったことはない。
だけどシエラには、エルザがいないその部屋が何だか妙に寂しく見えた。












(.....?)



どうしたんだろう、と疑問を浮かべるシエラは部屋を見回す。
そして、朝ここを出た時とは違うあることに気が付いた。






(何、これ?)



一枚の紙切れだった。
朝には見当たらなかったその紙切れは、机の上に置かれていた。



シエラは机に駆け寄り、その紙切れを見る。



シエラは紙面に目を凝らした。
黄ばんでいて端がギザギザに欠けている紙切れ。その紙切れには黒い小さな文字が。







【いつもの丘で待っている】


十文字あまりの黒い文字が黄ばんだ紙面に並ぶ。





(いつもの丘って、あの丘のことかしら?)


そう思った。
だが何だかシエラはその紙切れを見た時、妙な違和感を覚えて首を傾げる。



時々エルザは、一人で出かける時とかにメモを残して行くことがある。
行く場所やいつ頃帰るか。夕飯はどうするか。そんなことが書かれているメモだ。