mirage of story

 
 
 
 



カァカァ。

男の消えた方を呆然と見ていると、静かな緑の森の空間に烏の鳴く声が聞こえた。
 

ハッとして空を見上げると、もう陽が傾き始めている。
空が夕陽でオレンジ色に染まって綺麗だった。


綺麗。

思わずシエラは夕陽を眺め、それからふと今まで頭のどこかにいっていた此処へとやって来た理由を思い出す。








「.....あ、そういえばレイリスの花....。
急いでこの花摘まないと、陽が暮れちゃうわ!」



陽が暮れたりなんかしたら、余計にこの森から抜け出せなくなる。
それは御免だ。


そう思い、シエラは急いで周りに咲くレイリスの花を摘み取った。




「よし、これだけあれば十分ね」



そう言うシエラの手の中で、レイリスの白い花が揺れる。
片手に一杯。これだけあれば、エルザも喜んでくれる。



そう思いフッと笑みを零すと、片手一杯に花を抱えてエルザの待つ家へと帰っていった。

この花を受け取って喜ぶエルザの顔を思い浮かべながら。
そしてそれを見る自分の幸せに想いを馳せながら。