「.......はぁ....はぁ....」
目的の岩陰に着く。
その岩陰は二人の姿を優に隠した。
荒い息遣い。
抑えようとするが生理的に酸素を欲する身体は止められないものだ。
「......何とか撒いたみたいだ。
追っては来ていない」
カイムは岩陰から様子を窺うと安心したかのように岩に凭れかかり座り込む。
背中にゴツゴツとした岩の感触が伝わるが、疲れた身体を凭れ掛からせるには対して気にはならなかった。
ッ。
シエラもつられるようにカイムの隣に腰を下ろす。
「なぁ、シエラ?」
カイムは荒くなった呼吸を整える。
「ん、何?」
「......シエラの言葉、シエラのお母さんの声を信じてよかったよ。
ありがとう、御陰で二人揃って逃げることが出来た」
まだ僅かに乱れが残る呼吸で笑う。
溢れる安堵感に思わず出た自然の笑みだった。
「私の力じゃないわ。
母さんが助けてくれた......私とカイムを。
私こそありがとう。
あんな状況で私のあんな言葉を信じてくれて。
凄く、凄く嬉しかった」
「まぁ、本当はどうなるのか少し不安だったけれどね」
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