mirage of story

〜3〜










「カイム、走って!」



思惑が現実となったと認識した瞬間に、彼女はバッとカイムの手を取り走り出した。

無我夢中だった。
剣から放たれた光が辺りを支配していて、先がよく見えなかった。
だけど、二人は構わずに走った。





離れ行くライルの気配と殺気。
後ろからライルが追って来ては居ないと察する。


思いがけない不意打ち。幾ら戦い慣れた軍人と言えど、すぐには追っては来れないはずだ。

遠退く殺気に一瞬安堵する。

















(今のうちに、出来るだけ遠くに)



足を速める。

ライルは、彼は今のシエラ達にとっては天敵。
彼から少しでも遠くに、彼の視界から離れた所に行かなければ―――きっと彼女達は負ける。殺される。



......スウゥゥ―――。

辺りを包んでいた光がだんだんとその効果を失い薄れてくる。

薄れてしまえば視界も回復する。
急がなければ。








「奴は追って来ているか?」


「分からない。
っ!とりあえずあの岩陰に!
あそこから様子を伺いましょう!」




ッ。
指差す先には、大地から突き出した大きな岩。
姿を隠すには丁度良い。


光の白い闇が晴れ再びライルに姿が曝される前にあの岩陰へ。
思惑通りにいったとはいえ、敵の目から逃れたと確信出来なければ危機を脱したとは言えない。








「.....そう、しよう!」




全速力で走ってきた二人。
息が切れてきていたが、足を休めることなく走り続ける。




ダッダッダッ!
―――.....。

光が晴れてしまう前、滑り込むように二人は岩陰へと飛び込んだ。








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