mirage of story

 
 



 
 
 
(今のでバレた?)



シエラは緊張と焦りで騒つく胸を抑えながら、おそるおそる男を見上げこう言った。













「............何でございますですでしょうか?」


「........」



しばらくの沈黙。







(何だか.....焦りすぎて言葉が何か変だったような気がする)


気がするのではない。実際、相当おかしかった。
現に、相手の男は沈黙していた。


ございますですでしょうかって。
心の片隅に思いつつ、シエラは気まずいこの沈黙をどうにかしようと考えた。














「えっと.....何でしょうか?」



シエラは心を落ち着けて、今度はちゃんとした言葉で尋ねた。
顔にはぎこちない引きつった笑みを浮かべて。







「........此処だ」


男は先を指差しそう答えた。





「.....え?」



最初、シエラには男のその言葉の意味が分からなかった。
シエラはゆっくりと男が指差す先を見てみる。







「お前が言っていた場所はここだろう?」



指差す先。
そこには一面のレイリスの花。
そう。シエラが捜し求めていたあの場所だった。

あまりに男のことが衝撃的で、忘れていた。
そうだ。シエラはこの男に此処まで案内してもらっていたんだ。




内心、シエラは男に気付かれないでここまで来れたことにホッとする。



ッ。
そして男は、そんなシエラを余所に背を向けた。








「.........では私はここで失礼する」