カイムだって、同じ想いだった。
何も自分じゃ出来なくてただ立ちすくんで、大切な人たちが消えてゆくのをただ見ることしか出来なくて。
凄く苦しかった。
恐らくシエラだって、こういう想いを何回も何回もしてもう繰り返したくはないのだと思う。
痛い程分かる。
その気持ちは本当に痛い程。
「だけど、今はこれしか逃げれる方法が俺には思い付かない」
カイムは苦しそうに、そして悔しそうに言う。
迫る敵。
ライルが辿り着くまであと幾何も無い。
もう考えている時間はない。
.......。
ザッ。
カイムは意を決して、ライルを迎え撃とうと一歩前に踏み出す。
"........剣を構えて思い描いたことを念じなさい、シエラ"
っ!
一人で戦おう。
そう決意し前に踏み出そうとするカイムの背中。
それを引き止めようと手を伸ばした瞬間、シエラの脳の中に懐かしい声が迸る。
「っ!
待ってカイム!」
「シエラ、分かってくれ。
もう他に手がない。
俺が奴を引き付けるからそのうちに―――」
「違うの!」
「?
一体、一体どうしたんだ?」
「判らない......判らないけど今声が聞こえた!
剣を構え思い描いたことを念じろって、今声が聞こえたの!」
「声?
俺には聞こえなかったけど、でも一体誰の―――」
「母さんの、私の母さんの声だった」
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