でもその助けを請う人達を助けはしなかった。
ただその様を傍観していた。
鋭く光る血に飢えた剣を片手に携えて、向かってくる者が居れば斬り捨てた。
........。
冷たく曇った蒼い瞳で見下ろして見殺しにした。
何故か。
何故、自分はそんな残酷なことを。
理由は一つ。
助けを請うその人達が、人間だったから。
理由は、それだけ。
それ以上でも以下でもない。
自分に助けを請う者は人間で自分は村を襲った魔族なのだから。
当然のことをしたまでだ。
助ける義務などはない。
そんなものはない。
だけど───。
(...........あの人間達に罪は無いんだ。
それは俺も、心の何処かで分かってる。
でも、それでも)
それでも自分の中にあるルシアスを殺されたという恨みと哀しみの衝動は、どうしても人間に向けられてしまう。
それが例えルシアスに死を与えた者でなくても。
相手がか弱い女や子供、年老いた老人であろうとも。
(許せないんだ。
人間は.....全て、あいつを俺から奪った―――敵にしか見えない。
悪魔にしか、見えないんだ)
目の前でどんなに苦しんでいようと泣いていようと、ただ人間だというそれだけの理由で自分の中から憎悪以外の感情が抜け去ってしまう。
身体が、魔族としての血が復讐の鬼へと豹変させてしまう。
自分では抑えられない人として最も醜い感情が全てを支配して心の闇をまた一つ深くする。
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